降りさして下さい。過ごさして戴いた。飛ばさしておく。止まらしておく。等々。
従来、これらに出合うたびに鬱陶しく感じ、何処の方言だ?と思ったりしていました。この度、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC% … に出合い、昭和10年代には、これでよかったことを知って納得しました。ここまではよいのですが、文法の上からは説明が付けられません。
今日の「降りさせて」の場合、自己流ながら「降りる(上一)の未然形」に下一型の助動詞「させる」の連用形が接続したものとして説明が付きます。
昭和10年代の「降りさして」の場合、どう説明されるのですか。単純に助動詞「させる」がなく「さしる」があったというだけの話ですか。
よろしくお願いします。
No.3ベストアンサー
- 回答日時:
例によって情報提供だけで失礼します。
口語文法講座3「ゆれている文法」(昭和39年11月15日初版、明治書院)に、
「行かせた」と「行かした」
という論文が収められています。ぜひお読みになってください。手に入るかどうか不安ですが。
ご紹介下さった口語文法講座3「ゆれている文法」は借用可能とのことですので手配しました。金田一京助著「文法のもひとつ奥」は金田一京助全集、巻3に収録されていることが判明したので併せて依頼しておきました。
本来は両書を読了した後でないと適切なお礼はできません。が、それを待っては大分先になりそうですのでお礼を述べてしまいます。毎度、有り難うございます。またの機会にもよろしくお願いします。
No.4
- 回答日時:
「さして」は「さす」の連用形+接続助詞「て」ということですが、
違和感があるとすれば、もとの「さす」が古い表現だからでしょうか。「さす・さして」が方言として残る地域にも心当たりがあります。古い言葉が多く残っている上方方言圏です。「さす」を遡れば「せさす」だそうですが、これは聞き覚えがありません。
「さす・さして」は、日国には明治・大正期の用例が出ています。「させる・させて」の境目が昭和10年代かどうかはわかりませんでした。
以下、『江戸語大辞典』『大阪ことば事典」の用例と合わせて引いておきます。
----------
『日本国語大辞典』(小学館)
さす
[一]《他サ五(四)》人にある動作をするようにしむける。させる。
*歌舞伎・傾城仏の原(1699)一「内へ呼んで話をさして顔を俺に見せよ」
*多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前・九「姻家(さと)の母親などに対しても、こんな無法な事を為(サ)しては合はす顔もない」
*或る女(1919)〈有島武郎〉前一一踏みちがへたのは、誰がさした事だ と」
*苦の世界(1918-21)〈宇野浩二〉五・一「君にももっとらくをさしてあげられたかもしれんよ」
[二]《他サ下二》⇒させる。
----------
『江戸語大辞典』(前田勇編、講談社)
さす《動・助動サ五》「させる」に同じ。
明和初年ヵ・遊子方言「なんにもしろ提灯付さしてくんなさい」(助動)
天保三年・春色梅児誉美二ノ五「肌身を汚すやうな勤めをさしては、女達(をんなだて)と他にいはれた私が外聞」(動)
----------
『大阪ことば事典』(牧村史陽編、講談社学術文庫)
サス
(1)させる。 [例]わてにサセとくなはれ。あいつにサシたれや。
(2)(助動) 動詞について、それをさせる意になる。 [例]寝サス。話サス。止めサス。
----------
ついでに、『ChaSen(茶筌)』で形態素解析した結果を以下に示します。
「食べさして」を追加してみました。
-------------------
食べ 食べる 動詞-自立 一段 未然形
さし さす 動詞-接尾 五段・サ行 連用形
て て 助詞-接続助詞
降り 降りる 動詞-自立 一段 未然形
さし さす 動詞-接尾 五段・サ行 連用形
て て 助詞-接続助詞
飛ば 飛ぶ 動詞-自立 五段・バ行 未然形
さし さす 動詞-接尾 五段・サ行 連用形
て て 助詞-接続助詞
過ごさ 過ごす 動詞-自立 五段・サ行 未然形
し する 動詞-自立 サ変・スル 連用形
て て 助詞-接続助詞
止まら 止まる 動詞-自立 五段・ラ行 未然形
し する 動詞-自立 サ変・スル 連用形
て て 助詞-接続助詞
-------------------
食べ 食べる 動詞-自立 一段 未然形
させ させる 動詞-接尾 一段 連用形
て て 助詞-接続助詞
降り 降りる 動詞-自立 一段 未然形
させ させる 動詞-接尾 一段 連用形
て て 助詞-接続助詞
飛ばさ 飛ばす 動詞-自立 五段・サ行 未然形
せ せる 動詞-接尾 一段 連用形
て て 助詞-接続助詞
過ごさ 過ごす 動詞-自立 五段・サ行 未然形
せ せる 動詞-接尾 一段 連用形
て て 助詞-接続助詞
止まら 止まる 動詞-自立 五段・ラ行 未然形
せ せる 動詞-接尾 一段 連用形
て て 助詞-接続助詞
-------------------
参考:
『ChaSen(茶筌)』→ http://chasen-legacy.sourceforge.jp/
この回答への補足
ご回答は有り難く、きちんと読みました。感想を記してお礼とします。疑問文や問い合わせ文になっていても特に折り返し、ご返事を要求するものでも拒否するものでもありません。全くのご自由です。多分、文法で一括りに出来ない事情があるのだと思います。看過できない考え違いがあれば訂正を願います。
1 >>「さして」は「さす」の連用形+接続助詞「て」ということですが、
ANo.1のお礼の欄は今の時点では納得していません。正しいのかもしれませんが今のところ無条件で、こう言える資料には出合えないでいます。
条件付きで、この説の裏づけとなる国語辞典が一つ見つかりました。
三省堂、新明解国語辞典の「さ・す」に(助動・五型)[近畿・中国・四国の方言]との記事があります。これはANo.1のお礼の欄の後ろ盾になりますが、方言では困ります。
2 >>『日本国語大辞典』(小学館)に関連して
《他サ五(四)》の意味がよく分かりません。
「降りさして」は「降り」にサ行五段活用の動詞「さす」の連用形が接続したものと考えるのですか。この場合「降りささない」を正当と認めることになるのですね。
「降りさして」は「降り」にサ行四段活用の動詞「さす」の連用形が接続したものと考えるのですか。この場合「降りささない」を不当と認めることになるのですね。
これらの両者が混在していて甲乙着け難いというのですか。
3 >>『江戸語大辞典』(前田勇編、講談社)に関連して
>>さす《動・助動サ五》「させる」に同じ。
《助動サ五》から、1が必ずしも近畿・中国・四国の現象でなく、古くは江戸でも慣用だったということでしょうか。
《動・五》から、『日本国語大辞典』(小学館)と共通した認識でしょうか。
4 >>『大阪ことば事典』(牧村史陽編、講談社学術文庫)に関連して
活用形がないのが残念です。しかし、ややこしい議論の源は伏せておくのが賢いのかもしれません。
5 >>『ChaSen(茶筌)』で形態素解析した結果 に関連して
動詞「させる」の存在はよいとして「飛ばさせて」、「過ごさせて」、「止まらせて」の「せ」が動詞「せる」だというのは合点がいきません。国語辞典に動詞「せる」がありますか。
金田一京助は、昭和10年代には「降りさして」が正しい、と無条件で言っているのですかね。「文法のもひとつ奥」を読む必要がありそうです。
何はともあれ、口語文法講座3「ゆれている文法」の、「行かせた」と「行かした」を読むのが先決のようです。
毎度のことながら有り難うございます。またの機会にもよろしくお願いします。
No.2
- 回答日時:
続きです。
正しくは、未然形 降り・ささ・ない。
降り・さそ・う。
連用形 降り・さし・た。
終止形 降り・さす。
連体形 降り・さす・とき。
仮定形 降り・させ・ば。
命令形 降り・させ。
です。
耳障りであるかは主観的生理的問題で、
文法的分析とは関係ありません。
この回答への補足
これはお礼の欄に記入した後で記しています。
お礼の欄の
「分かりました。」と「本日中に何方からも新たな寄稿がないときは都合のよいときに締め切ります。」を撤回します。
もたついて済みません。
ANo.1、ANo.2の前提を確認させて下さい。ANo.1、ANo.2は
「昭和10年代に『降りさして』が正しい用法だったとすれば」が前提ですか、
それとも
「昭和10年代には『降りさして』が正しい用法であって」が前提ですか。
事情が許せばご返事を下さいませ。決して急ぎません。
なお、調べごとを要するときには、お礼が遅れます。ご理解下さい。
分かりました。
五段活用とのことですので表記は「さしすせそ」が端的に表れるようにしただけです。
>>耳障りであるかは主観的生理的問題で、
>>文法的分析とは関係ありません。
もとより承知しています。「こうであったと言われれば納得するしかありません。」。これは承知している人間の表現です。
本日中に何方からも新たな寄稿がないときは都合のよいときに締め切ります。
No.1
- 回答日時:
「降りさして」の「さし」は、
助動詞「さす」の連用形です。
五段活用です。
意味は「させる」とまったく同じです。
この回答への補足
早々のご返事、有り難うございます。
助動詞「さす」が五段活用で、その連用形とは、よく分かりませんが次の活用でよいのですか。ご訂正下さいませ。
未然形 降りさ・さない。
・・・・・・・降りさ・そう。
連用形 降りさ・した。
終止形 降りさ・す。・・・・・・(a)
連体形 降りさ・すとき。
仮定形 降りさ・せ(れ)ば。(b)
命令形 降りさ・せよ。・・・・(b)
万が一、上でよいとしても(a)、(b)辺りが抵抗ないか、辛うじて許容されるかの程度で残りは耳障りで叶いません。こういう言葉遣いを見聞するのなら昭和10年代との言語感覚より平安時代との言語感覚の方が近いとまで言いたいほどです。といっても昭和10年代には、こうであったと言われれば納得するしかありません。
訂正の件、よろしくお願いします。決して急ぎはしません。
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