今日の新聞の朝刊に “春の夜の軽きふとんはこころよく深くねむりて覚めぬもよけれ” というのが載っていました。現代のうたのようです。この「覚めぬもよけれ」ですが、解説には「一大事を紛れさせた」とあるので目が覚めずに寝てしまったことになるのでしょうか。 覚めぬの「ぬ」は完了の助動詞に思えてしまうのですが。「深く寝てしまって、その後目が覚めたのがよい」 確かに歌にするにはおかしい気がしますが。 打ち消しの連体形でしょうか? 覚めなかったのなら、「覚めず」では? それと、最後がなぜ已然形(?)なのですか。 「覚めずもよし」ではおかしいのですか。 ちょっとお恥ずかしいですが、お願いいたします。
No.3ベストアンサー
- 回答日時:
短歌・俳句は基本的に古典文法(文語)を用いることが普通です。
その前提の上で。まず、「よけれ」ですが、「よし」にしなかった理由はいくつか考えられます。1つ目は「よし」では字足らずになることです。2つ目は「よし」と終止形にすることにより文が終了してしまうために、余韻・余情が生まれず、短歌としての広がりに欠けることが考えられます。ですから敢えて終止形の「よし」とはしなかったのだと思います。
では、なぜ「よけれ」と已然形になっているのかですが、余韻・余情が生まれ、短歌としての広がりを持たせるためだと思います。終止形で敢えて終わらないことによりその後に続く言葉を想像させる。そのことが具体的に意識するかしないかは別として、短歌全体の広がりをもたらす技法です。
今一つは音の響きではないでしょうか。余韻・余情を生み出す技法の場合連用終止法・連体終止法という言葉がありますが、連用形・連体形で終わることが一般的です。このことは原則ではありません。用法的には省略法の一種ですので他の活用形や体言などで終わることも多くあります。また、已然形でも終わることはNO2の方の「田植機に豊かに乗りて名もなけれ 斎藤夏風」の例にある通りです。
形容詞ク活用の「よし」は本活用では、
く ・く ・し・き ・けれ・○
カリ活用では、
から・かり・○・かる・○ ・かれ
連用形であれば「く・かり」、連体形であれば「き・かる」が考えられます。「く・き」は字足らずになりますから「かり・かる」が候補となりますが、この2語尾の「か」音が強いと感じられたのではないでしょうか。「春の夜の軽きふとんはこころよく深くねむりて覚めぬも」と直前にあって、「春の夜」「軽き」「こころよく」「ねむり」「覚めぬ」と柔らかな意味・響きを持った言葉が続く中で、「覚めぬもよかり」「覚めぬもよかる」では音の響きが強くなり過ぎるために、「覚めぬもよけれ」と「か」音より響きが弱い「け」音を用いたのではないでしょうか。そこで已然形に結果としてなったのではと思います。短歌ですから感覚的な部分もあるので、作者が意識したかどうかは分かりませんが。
さらに思い出せないのですが古典に「よけれ」の用法があったようにも思います。
さて、「覚めぬ」の部分ですが、「覚め」は「覚め・覚め・覚む・覚むる・覚むれ・覚めよ」という下二段に活用する動詞です。そのため未然形と連用形が同じ形なので、完了の助動詞「ぬ」の終止形の「ぬ」(連用形接続)と、打消しの助動詞「ず」の連体形の「ぬ」(未然形接続)では接続により識別することはできません。
そのような場合はいくつかの方法がありますが、質問された方のおっしゃるようにこの短歌の場合、直前に「深くねむりて」とあることが解法のヒントです。意味からでも文法からも考えられますが、文法的には接続助詞の「て」は順接なので、上の言葉を受けてその当然の結果が下に来る働きをします。つまり、「深くねむり」という言葉を受けて、「覚めない」は当然の結果となるわけです。
文法的には以上のようになるわけですが、「覚めぬ」の後の係助詞の「も」は接続が「体言・助詞・用言や助動詞の連体形と連用形・種々の語」とあり、活用語の場合連体形接続が多いとはいえ、連用形の「ず」に接続しても文法的にはおかしくはありません。ただ、古典ではこのような場合「ず」はあまり使わない(慣用的には「ぬ」の)ように思いますし、やはり「ぬ」に比べると「ず」は響きが強いように思います。
はっきりしない、想像の部分もありますが、参考まで。
ご回答ありがとうございました。 学生時代は国語は嫌いで苦手だったのですが、最近、古典を読み直してみようと、少し勉強をはじめてみたところなのです(いつまで続くやら…)。外国語もそうでしょうけど、どうしても文法から入ってそれに縛られてしまうようです。うまく言えませんが、原則は原則として、音の流れ、響きなどが大事なのでしょうね。
No.2
- 回答日時:
たとえば「行くもよし、行かぬもよし。
」という言い方があります。幾つも用例があるので見てください。
http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclien …
「行くのもよい、行かないのもよい、どちらでもかまわない」というぐらいの意味です。
「行かぬ」は「行く」という文語の四段活用(口語では五段活用)の 動詞の未然形に打消の助動詞「ず」の連体形がついたものですね。
(完了の「ぬ」なら、連用形の「行き」について、「行きぬ」という形になるというのは、お分かりだと思います。)
文語の連体形には「~こと・~もの」というように、連体形単独で体言と同じ働きを表す用法(準体法)があります。
「行くもよし、行かぬもよし。」について上で示した「意味」の説明では「の」を用いましたが、「行くこともよい、行かないこともよい……」と訳すこともできます。
お示しの歌にあるように下二段活用「覚む」(口語では下一段「覚める」)などの場合には、未然形・連用形が同じ形なので、後に来る「ぬ」が打消か完了か区別しにくいのですが、この歌では後に続く「もよし(よけれ)」という言い方から、「覚め」を上記のように未然形と考えて、「ぬ」を打消ととるのがよいと思います。
「よけれ」については、まず、係助詞の「ぞ」「なむ」などがなくても文末が連体形で終わる"連体形止め"と呼ばれる用法があります。
http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclien …
それと同様に、本来は係助詞の「こそ」があるべき所にそれがない使い方で、名前を付ければ「已然形止め」とでも呼ぶべきもの、と考えることが可能かもしれませんが、この歌の場合は「こそ」のあるべき箇所に係助詞の「も」があるので、「も+已然形」という形でとらえた方がよいかもしれません。
あまり、一般的なものではなく、古文ではあまり見かけないようにも思いますが、ネット検索してみたところでは、現代俳句で次のような例がありました。
春雨にぬるるもよけれ泣きたくて 佐藤みちえ
http://www.weblio.jp/content/%E6%98%A5%E9%9B%A8% …
田植機に豊かに乗りて名もなけれ 斎藤夏風
http://www.weblio.jp/content/%E7%94%B0%E6%A4%8D% …
ご回答ありがとうございました。 学生時代は国語は嫌いで苦手だったのですが、最近、古典を読み直してみようと、少し勉強をはじめてみたところなのです(いつまで続くやら…)。外国語もそうでしょうけど、どうしても文法から入ってそれに縛られてしまうようです。うまく言えませんが、原則は原則として、音の流れ、響きなどが大事なのでしょうね。
No.1
- 回答日時:
現代短歌に、というか、江戸時代あたりでも、怪しいものは結構多いのですが、
ありがちな、「なんちゃって古文」なので、あまり深く追求しない方が、奥ゆかしいかと^^
評者も、そこんとこは、ツッコんでない訳ですから^^
「覚めぬ」の「ぬ」の方は、江戸時代には、「ず」の連体形「ぬ」が
終止形としても使われるようになり、それが、今の西日本全体の
方言「覚めん」になっているという、説明は可能かもしれませんが。
最後の已然形は、雰囲気として、余韻が残る気がする
(こそとセットだと^^)、というオマケがついた、
字数合わせかと^^
質問者さんにも、ちょっとツッコんでおくと^^
>「覚めずもよし」ではおかしいのですか。
連体形にする+字数合わせで、
「覚めざるもよし」の方がいいのでは^^
ご回答ありがとうございました。 学生時代は国語は嫌いで苦手だったのですが、最近、古典を読み直してみようと、少し勉強をはじめてみたところなのです(いつまで続くやら…)。外国語もそうでしょうけど、どうしても文法から入ってそれに縛られてしまうようです。うまく言えませんが、原則は原則として、音の流れ、響きなどが大事なのでしょうね。
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