当方中国の企業に雇用される日本国籍の者です。中国の企業は日本に現地法人を持たず、給与も中国現地の口座に振り込むことになります。
また、中国の企業から給料がもらうのですが、中国勤務ではなく、仕事と居住のベースは日本になります。
どうも中国の所得税法では、非居住者に対しても所得税などの課税はされるようですけど、私は日本居住者なんで、当然日本でも自分の税金の申告をしなくてはなりません。
その場合、中国ですでに一回所得税を引かれたが、日本でも所得税を引かれるのでしょうか?
それとも中国で引かれた金額をなにかしらの控除があるのでしょうか?もしある場合、具体的にどんな感じなのでしょうか?
今までは日本企業でしか勤務した経験がなく、税金も今まで天引きされてまったく自分で申告したことのない素人です。二重課税はとても嫌で、もしされたら手取りがかわいそうな感じになりそうなので、何とか回避したいなと思いますが、どうすればいいのでしょうか?
税金に詳しい方、ぜひご教授よろしくお願いいたします!
A 回答 (1件)
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No.1
- 回答日時:
日本と中国との間では「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税防止のための日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定」(昭和58年9月6日署名昭和59年6月26日効力発生、以下「日中租税条約」と言います。
)が締結されています。その中でこの質問に関係する条文を抜粋します。第5条(恒久的施設)
1この協定の適用上、「恒久的施設」とは、事業を行う一定の場所であって企業がその事業の全部又は一部を行っている場所をいう。
2~5省略
6 1及び2の規定にかかわらず、一方の締約国内において他方の締約国の企業に代わって行動する者(7の規定が適用される独立の地位を有する代理人を除く。)が次のいずれかの活動を行う場合には、当該企業は、その者が当該企業のために行うすべての活動について、当該一方の締約国内に「恒久的施設」を有するものとされる。
(a) 当該一方の締約国内において、当該企業の名において契約を締結する権限を有し、かつ、この権限を反復して行使すること。ただし、その活動が4に掲げる活動(事業を行う一定の場所で行われたとしても、4の規定により当該一定の場所が「恒久的施設」とされない活動)のみである場合は、この限りでない。
(b) 当該一方の締約国内において、専ら又は主として当該企業のため又は当該企業及び当該企業を支配し若しくは当該企業に支配されている他の企業のため、反復して注文を取得すること。
7省略
第15条(勤務に対する報酬)
1 次条及び第18条から第21条までの規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の居住者がその勤務について取得する給料、賃金その他これらに類する報酬に対しては、勤務が他方の締約国内において行われない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。勤務が他方の締約国内において行われる場合には、当該勤務から生じる報酬に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。
2 1の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者が他方の締約国内において行う勤務について取得する報酬に対しては、次の(a)から(c)までに掲げることを条件として、当該一方の締約国においてのみ租税を課すことができる。
(a) 報酬の受領者が当該年を通じて合計183日を超えない期間当該他方の締約国内に滞在すること。
(b) 報酬が当該他方の締約国の居住者出ない雇用者又はこれに代わる者から支払われるものであること。
(c) 報酬が雇用者の当該他方の締約国内に有する恒久的施設又は固定的施設によって負担されるものでないこと。
3 1及び2の規定にかかわらず、一方の締約国の企業が国際運輸に運用する船舶又は航空機内において行われる勤務にかかる報酬に対しては、当該一方の締約国において租税を課すことができる。
第16条(役員の報酬)
一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者である法人の役員の資格で取得する役員報酬その他これらに類する支払金に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。
回答です。
1 中国の課税の有無
質問文に「中国勤務ではなく、仕事と居住のベースは日本」との記載が有りますが、これが次のどちらに該当するかによって扱いは大きく変わります。
A 中国企業の役員の資格で勤務
B A以外
Aに該当する場合は日中租税条約第16条の規定から、中国にも課税権があります。
即ち、質問者の例を条文に当てはめると「日本の居住者である質問者が、中国企業の役員の資格で取得する役員報酬その他これに類する支払金に対しては中国も課税権がある。」となります。
Bに該当する場合は日中租税条約第15条第1項の規定から中国には課税権はありません。
即ち、質問者の例を条文に当てはめると「日本国の居住者である質問者が、日本国内での勤務に対して給料を得るのですから、その給料に対しての課税権は日本にのみある」となります。日本では国内法と異なる租税条約の規定があり、その適用を求める場合には所要の手続きが必要です。中国の手続は分かりませんので、給料の担当者にこの旨を伝え、必要な手続きを教えてもらってください。
2 二重課税の調整
中国から課税された場合は日本の所得税第95条に外国税額控除の規定があり、二重課税の調整方法が規定されています。原則的には外国税額を日本の税額から控除しますが、控除の限度額があります。詳細は国税庁のホームページ⇒タックスアンサー⇒所得税⇒税金から差し引かれる金額(税額控除)⇒No.1240 外国税額控除をご参照ください。
3 質問者の税金処理
質問者の税金処理は次のとおりとなります。
(1) 給料の日本円換算
給料は「中国現地の口座に振り込む」とありましたが、通貨は人民元か日本円か書かれていませんので判りませんが、人民元の場合は日本円への換算」が必要です。
(2) 所得税の申告納税
暦年課税ですので年初から年末までの所得を翌年2月16日から3月15日までに住所地を管轄する税務署に確定申告することになります。この際、質問者は居住者ですので全世界で得た所得について申告しなければなりません。その結果、算出された税額から上記2の外国税額控除を行うことになります。納税も3月15日が期限です。
(3) 住民税
所得税確定申告の結果は住所地の市区町村に連絡され、その結果で5月に住民税の課税通知が送付されます。納税は年4回の分納です。
(4) 社会保険
市区町村及び年金事務所にお問合せ下さい。
4 質問者の住居が恒久的施設に該当するか否か(日中租税条約第5条参照)
質問にはないのですが気になったので、恒久的施設の問題について簡記します。
外国企業に対する日本の課税は恒久的施設の有無によって変わります。恒久的施設があればて中国企業の日本での国内での活動にかかる所得に課税されますので法人税等の申告納税が必要となります。なければ、日本国内から受ける利子配当等のみが源泉課税されます。
質問者の中国企業の場合、質問者の日本での権限と活動内容によっては質問者のお住まいが中国企業の日本国内での「恒久的施設」に該当する可能性があります。
もし、検討未済の場合、当事務所でもご相談をお受けします。
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