

No.3ベストアンサー
- 回答日時:
私は芥川作品は大好きです。
映画にもなったこの作品を読み終えたとき、ある疑問が浮かびました。「悪とは何か」と。この物語に出てくる下人は老婆の着物を剥ぎとるという悪事を働いた悪人。しかし、私はこの下人を「ただの」悪人とは思えませんでした。なぜなら、この下人の中にはたしかに自分なりの正義があったから。下人が老婆に出会う前、餓死するか、生きるために盗みも犯すかと迷っていました。これはまだこの世の中の善し悪しがわかっていたからでしょう。ここで迷わず、すぐにでも盗みを犯していたのなら下人は「ただの」悪人であったと思います。
しかし、老婆と出会うことによって、下人になかった勇気を与えることになりました。それも、羅生門の下にいたときには欠けていた勇気とは全く逆のほうに動こうとする勇気です。老婆の「生きるためにしかたのないこと。」という主張は下人の善と悪はひっくり返すこととなり、下人の正義までも変えてしまいました。
その後の下人の豹変ぶりはものすごいものでした。老婆が死人の髪の毛を抜いているのを見たときは全ての悪に対する反感・憎悪に駆られていたというのに、その正義がなかったかのように老婆の着物を剥ぎとり、「己もこうしなければ餓死する体なのだ。」と、老婆と同じようなことを言い、罪を犯してしまいました。
下人は、きっと老婆のこの言葉によって、「盗みを犯してまで、生き延びてはいけない」という足枷が外れてしまったのでしょう。私も、迷っていたときにこのような言葉を聞いたら、一切の迷いが晴れ、悪事を働くことになるかもしれません。なぜなら、下人も私も「生きたい」からです。とても過酷な状況下の中、「生きたい」と望むものにとって、老婆が言った言葉はこの世でいちばん奮い立たせる言葉だと思います。「生きるために仕方のないこと」すわなち、「生きるためには悪事を働いてもかまわない」「手段を選んではならない」と下人は思ったのでしょう。きっと私も、いえ、私「達」もそう思うでしょう。「生きたい」と思うのは人間の本能だから……私が「ただの」悪人ではないと思うのは、このこともあるからです。下人は「いきたい」という人間の本能に忠実だっただけなのですから。
芥川が伝えたかったのは「命の現実」だったのだろうと私は思います。私はこの下人のように「命の現実」を突き付けられたことはありませんし、多分これからもないと思います。しかし、この世の中、最初の下人のようにきれいごとを言って生きていけるほど甘くはないでしょう。私はこの先、下人ほどの悪事を働くことはないでしょうが、ときには自分が生きていくために「悪」の選択をし、生きていくと思います。このように考え、何度か羅生門を読み返していった自分が初めて読んだときに浮かんだ疑問を答えるとするならこう答えます。「悪とは生きることかもしれない。」と。
芥川龍之介は自分でこの物語を描いておきながら、自ら命を絶っています。もしかしたら、芥川は怖かったのではないのでしょうか。生きることによって自分が「悪」に染まっていくのが……私も「悪」に染まっていくのは怖いです。それでも、私はそんな恐怖の中、生きていくのでしょう。しかし、そんな中でどれだけ「善」の選択ができるかどうかが問題だと思います。今の私は、「善」より「悪」の選択を多くするでしょう。けれど、その選択は自分の経験によって変わってくると思います。私は多くの経験をし、多くの「善」の選択をし、「完全」な「悪」に染まらないように感じて行きたいですね。
この回答へのお礼
お礼日時:2018/06/03 00:12
回答ありがとうございました!
この文章からhidzさんの思いが凄く伝わりました。私はここまで深く考えられなかったので凄いなと思いました。
No.4
- 回答日時:
今授業でやっていますが、とても不気味な話だというのが私の率直な意見です。
何を伝えたいのかよくわからないです。
下人が老婆と出会い、それがなんだっていうのか。
話の中の下人はコロコロ気持ちが変わりやすい人ですよね。
もしかしたらそれで人間味を表しているのかもしれませんね。
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