No.2ベストアンサー
- 回答日時:
他人物売買も,契約自由の原則からは特に制限がありません。
しかし,通常の売買よりも,必ずしも売主に帰責性がなくても債務不履行になる可能性が高く,買主保護の必要性が高いことから,特に売主の義務(560条)が明示され,売主の担保責任(561条ないし564条,ただし562条は善意の売主保護の規定)が課されています。もっとも,買主が,他人物売買であることを承知している時は,その危険性を理解した上で契約していることから,一定の危険を負担すべきであり,要保護性は低くなります。
そのような理解で,条文を読んでいくと,分かりやすいかと思います。
まず,権利の全部が移転できない時は,買主としては,別のことにお金を使いたいと考えます。このとき,旧契約については,履行不能(543条)による契約解除も可能なようにも思えますが,売主に帰責性がない場合は,履行不能解除ができません(同条但書き)。契約解除をしていない場合,別のことにお金を使った後で,今の売主から履行がされて,代金の請求を受ける危険性があり,不都合です。
これを解消するために,買主の解除権を認めるのが561条前段です。この不都合は,買主の善意悪意に関係ありませんから,どちらにも認められます。ただ,他人物売買であることを知っていた悪意の買主は,履行不能を予期したはずなので,損害賠償請求権まで認める必要がないと考えられます(561条後段)。
一方,一部が他人物の場合は,他人物以外の部分については契約の履行が可能なので,基本的には不履行部分について代金の減額をすることで,売主買主間の公平を図ることになります(563条1項)。これは善意悪意関係ありません。
しかし,買主としては,目的を達せられないのであれば,一部だけ履行されても困りますから,解除も認められます(同条2項)。こちらは,悪意の買主は,そのような事態を予期すべきであったのだから,残りの契約は履行すべきということで,解除は認められません。
なお,いずれにしても,債務者に帰責性がある場合には,売主の担保責任とは別問題で,悪意であっても,債務不履行による解除と損害賠償の請求はできます。(543条,545条)
No.1
- 回答日時:
出発点は、「悪意者は原則として保護しない」ところにあります。
その上で、損害賠償の担保があれば、売買の履行不能部分につき契約の効果を認めなくても特に問題はないといえます。
一部他人物の場合には、自己の所有物の売買についてまで解除を認めるのは妥当でない一方、悪意者にも一部履行不能に対応した代金減額請求のみ認めています。また、全部他人物の場合には、代金減額請求は無意味である一方で、悪意者にも全部履行不能に対応して解除を認めたものです。
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