
砂川重信『理論電磁気学』を読んでいるのですが、途中で分からない箇所がありました。
図の電気双極子についての説明なんですが、下から3行目の式が導出できません。
Rが何を示すかも説明がありませんでした。分かる方よろしくお願いします。
図→http://i.imgur.com/A0E4Z.jpg
No.9ベストアンサー
- 回答日時:
#6です。
>s=s(r')としてsをベクトル場のように考える・・・
結果的にそうなりますが、自分はもっと単純に発想したいです。この後、電気双極子(ベクトル)pを、もっと電荷密度と相性良くするために、dv'を微小体積として、
p=Pdv'
で電気双極子密度P(ベクトル)が導入され、ちょっと面倒臭い計算を行った後、分極電荷密度をρとすれば、
ρ=-divP
だという話に進むと思います。この話の趣旨は、巨視的観測にかかるのは分極電荷密度ρ(スカラー)である、だと思います。ρは電荷密度なので、それは原子の位置r'(本当は負電荷の位置)だけの関数ρ(r')です。ここから話を最初にさかのぼると、結局p=es(r')となり、結果として、
>r'は原子の位置ベクトルとみなせ、「s(r')は位置Q(r')にある原子に関する、大きさが微小で方向がr'に依存するベクトル」
と捉えた事になります。
原子の分極状態は、原則その場所の原子の都合で決まると思えるので、巨視的観測にかかるものだけで処理するという立場では、上記のように考えて問題ない気がします。なので、
微小な大きさも方向もr'に依存する
と考える方が、自分はすっきりします^^。
No.8
- 回答日時:
すみません.ANo.2です.
砂川先生の本には,質問者様が載せてくださっている図の次の頁に
> ここでgrad_Qは双極子の存在する場所における微分をとることを意味する.
とあるので,私はてっきり「x↑で微分した結果をQの位置で評価する」という意味かと解釈してしまいましたが,どうも砂川先生のおっしゃってることは「双極子の存在する場所によって微分する」という意味なんですね.恥ずかしながら他の方の回答を読んでやっと気づきました.その意味だと,ANo.2の結果
> lim φ(x↑) = ... = -1/(4πε0) p↑・grad_Q(1/R)
の負号は不要ですね.
なので,まとめると以下のようになるのでしょうね・
--------
位置x'↑に電荷-e,位置x'↑+s↑に+eが存在する系がつくる,位置x↑における電位をφ(x↑)とする.
p↑=e s↑
と置いて,このp↑を一定に保ったままs↑→0の極限をとると,φ(x↑)は添付図のようになる.
ただし,∇'はx'↑による微分を表し,また
R = |x↑-x'↑|.
※∇にダッシュがついてるのがミソ.
--------
電気双極子の正・負の電荷の間隔は限りなく0に近いものです.かといって,電荷の絶対値|e|の大きさを一定にしたままs↑だけを0に近づけると,「同じ位置に±eの電荷が存在する」という状態に近づき,これは「電気的には何もない」のと同じですから,こんな状態を考えても意味はありません.
そこで,
p↑ = e s↑
を一定に保ったまま,s↑→0の極限をとると,「±eの位置はどんどん近づいていくが,それに伴って|e|は大きくなっていく」ので,極限ととっても「電気的には何もない」という状況にはならないわけです.

No.6
- 回答日時:
同じ本を持ってます。
同じ所も読みました。結論と言うと、#5さんと同じなのですが、自分も初見では、「そもそもeは、電子の素電荷なんだから、(s→0,e→∞,p=一定)の極限なんか不可だ!」
と思いました。答えを言うと、上記は一種の数学的辻褄合わせですが、正当な理由があります。理由はこの章の、理論的背景です。この章全体がそうですが、静止物体中の電磁場を扱うために、誘電体,導体という簡略化された物性モデルを導入し、
(1)巨視的現象論を立てる.
のが、この章の目的です。もう一つは、質問リンク画像の1ページくらい後に出てきますが、(1)から、
(2)電気双極子を電荷密度とみなす.
という目的があるからです。リンク画像の最後の式の導出過程を分解して、自分は次のように考えました。
添付画像の式(a)が、電気双極子のもともとの静電ポテンシャルです。rは観測点,r'は負電荷の位置,sは正電荷と負電荷の位置ベクトル差で、sは原子直径以内なので非常に小さいです。そうすると(a)は、s=0の時の[φ(r)の値]+[sの1次の項の値]で近似できるはずです。
s=0とするとφ=0なので、[sの1次の項]だけで、添付画像の式(b)のように近似できます。~は概ね等しいを表し、∇以下はs方向の方向微分で、∇はr'に作用し、・は内積です。esは電気双極子の大きさと方向を決めますが、(1)より、巨視的立場ではsなんか小さすぎて見えません。またそれを根拠に(2)をやろうという訳です。
とすれば、sはr'の関数ですが、r'を巨視的立場で見た原子の位置と考え、p(r')=esとして、これを電気双極子ベクトルと名づけ、~を=に直して、巨視的現象論的式:添付画像(c)を想定すべきだ、となります。これは(a)でs→0の極限を取った数学的理想化と同じで、(2)の要求を満たします。(c)のどこにもsは現れず、r'は原子の位置としているので。
ところで(c)は、質問リンク画像の最後の式と一致します。そしてこれは、(a)で、(s→0,e→∞,p=一定)の極限を取った結果でもあります。これが数学的辻褄合わせの正体です。(2)から、s→0の数学的理想化を行う事が目的だった訳です。しかし数学的理想化だと了解してしまえば、(2)からs→0は是非必要で、p=esは固定なので、e→∞と形式的に「みなす」のは、ある意味、理想化への一本道で、妥当というより当然でもあります。
砂川先生の理論電磁気学は、読み手の事を良く考えて下さった非常に丁寧な本だと思います。しかし初見では、「これは数学的理想化である」くらいの一言は欲しかったな、と思いました。さすがの砂川先生も、先生には余りにも自明な事なので、余りにも頭の巡りの悪い読み手の躓きは、想定外だったのかな?と、ちょっと考えました。
でもですね。これは「そんな事くらい、自分で考えなさい」という、砂川先生の教育的指導なのかも知れませんよね?^^。それに、(s→0,e→∞,p=一定)の極限を導入すると、自分のように色々言わなくて済み、しかも全部の式を「=」でつなげられるので、非常にスマートです。
本当はこの辺りが、本当の理由だったりして・・・^^。
この回答への補足
回答ありがとうございます。一カ所だけ分からないところがあります。
>sはr'の関数ですが、r'を巨視的立場で見た原子の位置と考え、p(r')=esとして
sがr'の関数っていうのはどういう事でしょうか?s=s(r')としてsをベクトル場のように
考えるという事ですか?つまりr'は原子の位置ベクトルとみなせ、「s(r')は位置Q(r')に
ある原子に関する、大きさが微小で方向がr'に依存するベクトル」ととらえるということでしょうか?
No.5
- 回答日時:
追記です。
>p=esを一定に保ちながらs→0って矛盾してませんか?
s→0と同時にそれと同じ速さでe→∞という操作をすれば矛盾は回避できます。s→0をしながらeを操作しないとp→0になるどころかあなたが懸念しているようにφ→0になってしまいます。
e→∞としてもいいのかということに関してですが、そもそもs→0自体が近似ですので有限値をとるべきeを発散させる操作もある種の近似のための操作として認める他ないと思います。
今は、単に2点に電荷が反対の粒子があるというのではなく、電気双極子モーメントとして存在している状態を仮定しています。単に2点に電荷が反対の粒子があるという状態ならば当然s→0で電荷は合体して総電荷は0、静電ポテンシャルも0となるでしょうが、今は電気双極子として考えているので、s→0としても電気双極子としての性質は残す必要があります。そのため「無限に電荷同士が近づいても電荷も十分に大きいので、それぞれ個別の電荷の影響は電場に反映されるのだ」と考えてp自体を一定としてs→0という操作をしているのだと思います。
実際の世界では、例えば電気陰性度の大きい分子などのがモデルになることと思いますが、当然sもeも有限の値です。
No.4
- 回答日時:
あと,
> lim φ(x↑)
> = lim e/(4πε0) (1/R(Q'P) - 1/R(QP))
> = e/(4πε0) lim (1/|x↑ - s↑| - 1/|x↑|)
> = 1/(4πε0) lim es (1/|x↑ - s s^| - 1/|x↑|)/s
> = -1/(4πε0) lim es (1/|x↑ + s' s^)| - 1/|x↑|)/s'
> = -1/(4πε0) lim es (∂/∂s)(1/|x↑|)
> = -1/(4πε0) lim es (∂/∂s)(1/R)
> = -1/(4πε0) p(∂/∂s)(1/R).
の部分ですが,
s' = -s
です(途中で作業を中断したので説明を忘れてしまいました).
s→0 のとき s'→0
です.
「pを一定に保ったままs→0」という極限操作は
「pを一定に保ったままs'→0」となります.
No.3
- 回答日時:
いえ,pの値はそのまま保っておいて,sのみを0に近づけていく操作です.
p = es
なので,pを一定の値に保つのであれば,|s|を小さくしていくと,それに反比例して|e|は大きくなっていきます.そういう操作です.
例えば,p = 1 [C・m]に保ったまま,sを
s = 1, 1/10, 1/100, 1/1000, ... [m]
って感じで0に近づけていくのであれば,eは
e = 1, 10, 100, 1000, ... [C]
と,大きくなっていきます.結果としてp = 1 [C・m]の値は一定のままです.
そういう極限操作です.
この回答への補足
eが大きくなる事って許されるんですか?
物理的状況としては水素原子に電場をかけたようなものを
想定してるんですよね?そうするとeは実際の電子か水素原子核の
どちらかで、定数じゃないとダメだと思ったんですが。
考え方が違うんでしょうか?
No.2
- 回答日時:
以下,ベクトルsを s↑ などと表します.
また,s↑ 向きの単位ベクトルを s^ と表すことにします.
∂/∂s
という記号を見て,「なんでsで微分するんやろ?」と思ったのですが,どうやら
s↑方向の方向微分を表しているようです.
fの方向微分係数の定義:
(∂/∂s)f(x↑)
= lim[s→0] {f(x↑ + s s^) - f(x↑)}/s.
また,
x↑ = QP↑,
R = R(QP) = |QP↑| = |x↑|
と表します.そうすると
R(Q'P) = |x↑ - s↑|
なので,「p↑を一定に保ったままs→0」という極限の取り方を単にlimだけで表すと,
lim φ(x↑)
= lim e/(4πε0) (1/R(Q'P) - 1/R(QP))
= e/(4πε0) lim (1/|x↑ - s↑| - 1/|x↑|)
= 1/(4πε0) lim es (1/|x↑ - s s^| - 1/|x↑|)/s
= -1/(4πε0) lim es (1/|x↑ + s' s^)| - 1/|x↑|)/s'
= -1/(4πε0) lim es (∂/∂s)(1/|x↑|)
= -1/(4πε0) lim es (∂/∂s)(1/R)
= -1/(4πε0) p(∂/∂s)(1/R).
ところで,方向微分係数は次のようにgradを使って表すことができます:
(∂/∂s)f(x↑)
= lim[s→0] {f(x↑ + s s^) - f(x↑)}/s
= lim[s↑→0↑] {f(x↑ + s↑) - f(x↑)}/s
= lim[s↑→0↑] (s↑/s)・∇f(x↑)
= s^・grad f(x↑).
したがって
lim φ(x↑)
= -1/(4πε0) p(∂/∂s)(1/R)
= -1/(4πε0) p s^・grad_Q(1/R)
= -1/(4πε0) p↑・grad_Q(1/R)
なんか本の結果と符号が反対になっていますが,
grad(1/R) = (d/dr)(1/R) grad R = (-1/R^2) x↑/R = -x↑/R^3
を用いると,
lim φ(x↑)
= -1/(4πε0) p↑・grad_Q(1/R)
= 1/(4πε0) p↑・x↑/R^3
となって,多くの教科書に載っている結果と一致しますから,これでいいような気がします.
間違ってたらごめんなさい.
> 新たに質問なのですが、p=esを一定に保ちながらs→0って矛盾してませんか?
これは,気持ち悪かったら,上の式の中のeをp/sと書き換えて,eを消去してしまえば,「p=esを一定に保ちながらs→0」という極限を,単なるlim[s→0]に置き換えられます.
この回答への補足
回答ありがとうございます。方向微分係数というのは初めて知りました。
e=p/sとしてもs→0のときp→0じゃないとダメじゃないですか?
そもそも「一定」というのは、ここではどういう意味で使ってるのでしょうか?
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