法学の事例問題でわからないものがあるので、分かる方教えていただきたいです。
Aは北海道のホテルが宣伝する「タラバガニコース」を食するために東京から北海道へ1泊の旅行をし、食事の代金 1万円を含め旅行に総額5万円使った。食事をしてから半年後、そのカニがズワイガニであったことがわかった。Aはホテルにいくらの賠償請求が可能か。
Aはタラバガニを食べるための旅行だったので5万円の賠償を希望している。
民法415条の債務不履行を使うのかな?と思うのですが今年法学部に入ったばかりで答えかたなどがまだまだよくわかりません。よろしくお願いします。
A 回答 (2件)
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No.1
- 回答日時:
細かく議論すると、たいへん難しい問題です。
さて、法学部に入ったばかりということなので、あまり細かい議論はしないことにします。
1、契約の個数・類型
まずは前提問題として、契約の個数が問題になります。説問では、旅行と食事がありますから、これを別個の契約と見ることが可能です。そして、設問を読むと、「ホテル」が宣伝する「タラバガニコース」とありますから、旅行の手配はホテル以外が行ったと考えられます。
そうすると、設問は、「タラバガニコース」の食事提供の契約(他の契約類型と考えることも可能ですが、売買契約と考えて良いでしょう。債権各論の授業なら、ここも論点になります。)になります。
実際に答案に書く際は、ここは端的に書くことです。たとえば「Aとホテルは「タラバガニコース」の食事を提供することとその対価を支払うことを内容とする契約を締結しているから、売買契約である」といった書きぶりになります。
2、錯誤
Aはタラバガニが提供されると思っていたのに、実際に出てきたのはズワイガニだった。タラバガニが提供されることは、「タラバガニコース」と宣伝されていたことから、売買契約の内容すなわち意思表示の内容になっています。そうすると、意思表示の内容と実際の事実(真実)とが食い違いますから、民法95条の「錯誤」の問題になります。
「錯誤」は無効とされます。
3、債務不履行責任
ホテルはAに対し、「タラバガニコース」の食事を提供する債務を負っていたにもかかわらず、実際にはズワイガニを提供しています。
カニの食事事態は提供されたのであり、履行そのものが全くなかったわけではありません。しかし、それは「タラバガニ」ではありませんから、債務の本旨にしたがった履行とはいえません。したがて、ホテルのズワイガニの提供は「不完全履行」に該当し、債務不履行ということができます。
4、錯誤と債務不履行の関係
そうすると、今回の「タラバガニコース」契約については、錯誤無効の主張と債務不履行責任の2つが考えられます。この両者の関係が問題になります。
多数説は、Aはどちらの主張をしても構わないと考えます。どちらもAを保護するためのものだからです。また、錯誤が債務不履行を排除する(あるいは、債務不履行が錯誤を排除する)明文の規定もありません。
ここは、両方が認められることを前提に考察するのが良いでしょう。
5、錯誤無効の効果
錯誤無効を主張すると、「タラバガニコース」の契約が無効すなわち無かったことになります。そうすると、Aもホテルも「タラバガニコース」の契約がないのに受けてしまった利益を返還することになります。不当利得の問題になります。
Aは「タラバガニコース」の契約がないならば、出された食事を食べることはできないのですから、本来、出されたズワイガニの食事を返還すべきです。しかし、もうその食事は食べてしまいましたから、ズワイガニの食事相当分の価額を返還すべきことになります。
ホテルは、「タラバガニコース」の契約がない以上、Aから受け取った代金の返還をする必要があります。ここで、Aとホテルは、それぞれ互いに金銭の返還義務を負いますから、対等額で「相殺」することが可能です。
結論として、Aがホテルに旅行代金を請求することはできません。ホテルは旅行代金を受け取っていないからです。
6、債務不履行責任の効果
債務不履行の効果として損害賠償請求があります。債務不履行に基づく損害賠償責任が認められるためには、債務不履行の存在・債務者の帰責事由の存在・損害の発生・債務不履行の損害の因果関係、の4つが必要です。
債務不履行の存在については不完全履行が認められます(旅行中の食事ということですから、本来の「タラバガニコース」の提供は社会通念上不可能と考えらえます)。
タラバガニとズワイガニを間違えるというのは、ホテルでは考えられないことですから、債務者の帰責事由の存在も認められます。
損害の発生はどうでしょうか。食事代金については、あまり問題ないでしょう。ズワイガニの食事をしたことにより受けた利益については、「損益相殺」で公平を図ります。
旅行代金はどうでしょうか。旅行代金についても、実際に支出していますから、損害の発生は認められると考えて良いと思います。
それでは因果関係はどうでしょうか。損害賠償における因果関係とは、条件的因果関係を前提として「相当因果関係」が必要というのが通説判例です。
条件的因果関係とは、「あれなくばこれなし」という関係をいいます。タラバガニコースでないならば、食事はしなかったと言えるので、債務不履行と食事代金には条件的因果関係はあります。
同様にタラバガニコースでないならば、旅行はしなかったのであれで、債務不履行と旅行代金には条件的因果関係はあります。設問からは、この条件的因果関係は認められます。
そうすると問題は相当因果関係です。
詳しくは授業や教科書で勉強してもらうのが一番ですが、大雑把にいって、その債務不履行がら損害が発生するのが通常といえる場合に、因果関係が認められるとするのが相当因果関係です。これには、当事者が特別に知っていた事情についてはこれを考慮します。
そうすると、「タラバガニコース」を注文したのにズワイガニが出てくるならば、その食事をしなかったというのはごく普通のことですから、相当因果関係は認められます。
それでは、「タラバガニコース」を食べるために4万円も旅行代金を使うことはどうでしょうか。これは、通常のこととはいえません。したがって、相当因果関係は原則としてないことになります。ただし、Aが事前にホテルに電話して、「タラバガニコース」のために、旅行代金4万円を使って食事に行きます、予約させてください、などと電話していたら、旅行代金4万円も相当因果関係は認められるでしょう。ただし、この場合も、旅行を楽しんだ部分はあるでしょうから、「損益相殺」を認めるべきと思うのですが、ここは意見が分かれるかもしれません。
旅行代金については、不法行為責任も考えられないこともありませんが、債務不履行責任と同様に相当因果関係が問題になります。また、契約当事者関係なので、法学部の授業としては、検討の必要はないと思います。
この回答への補足
本当にありがとうございます!!!こんなに詳しく丁寧に…感動しました。
すごくわかりやすかったです!
僕はまだ、これを回答にまとめるのがよくわからなくて、もしもお時間ございましたら簡単に回答の書き方を教えていただけると嬉しいです。本当にもしお時間があったらで大丈夫です!
本当に本当にありがとうございました!
No.2
- 回答日時:
No.1です。
補足として不法行為責任について書きます。
今回の事例が、最初から「タラバガニコース」と宣伝しておきながら、ズワイガニを出すつもりで、全国的に宣伝した場合には、不法行為責任を考える実益があります。
ここでは単純に「タラバガニではなく、ズワイガニを出した」という事実を超えて「最初からズワイガニを出すつもりで、タラバガニコースと全国的に宣伝した」とい一連の行為を捉えて不法行為と見ます。ただし、このような行為を不法行為とすることは、設問にはない条件(最初からズワイガニを出すつもりだった、全国に宣伝など)を付け加えることになるので、先生によっては、減点材料にもなります。
さて、答案の書き方です。
実は、これがとても難しいところです。法科大学院レベルでも答案の書き方は、学生が悩むところです。
答案の書き方としては、問題提起、根拠を示して規範定立、あてはめ、という3つのステップを踏むことです。
特に難しいのは、問題提起の部分です。
例えば錯誤のところでは、「Aはタラバガニコースの食事をするためにホテルに行ったが、実際にホテルが提供されたのはズワイガニであった。そのため、Aの意図した食事内容と実際に提供された食事に食い違いがあるため、民法95条の錯誤無効が主張出来ないかが問題になる。」という大きな問題定期をします。
そこで、錯誤無効の要件を挙げて、その要件該当性を検討します。
錯誤無効の要件としては
意思表示の内容に錯誤があること
意思表示の要素に錯誤があること
表意者に重大な過失のないこと
を順番に挙げて、規範定立してあてはめをします。
法科大学院の学生ならば、問題集の参考答案を良く読んで、自分なりの解答スタイルを確立して下さい、というところです。
意思表示の内容に錯誤があることについては、例えば「民法95条における錯誤とは、意思表示を無効とする効果をもつものであるから、内心の効果意思と実際の事実との不一致を意味すると考える」(この部分が規範定立です)「本問では、Aはタラバガニコースという宣伝を見てたうえでタラバガニコースを注文したのであるから、Aの内心の効果意思は、タラバガニの食事であった。しかし、実際にホテルが提供したのはズワイガニであるから、内心の効果意思と実際の事実は一致していない。したがって、意思表示の内容に錯誤がある。」
こんな感じでしょうか。
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