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民法での「委任の終了」と不動産登記法での「委任の終了」は、使われる場面が全く異なると思うのですが、これをごっちゃに捉えている方がいて困っています。
私が加入している自治会は、いわゆる権利能力のない社団のため、自治会が所有している土地は30年以上もの間、登記の原因を「委任の終了」として登記名義人をお願いし、引き継いできました。

ところが最近、「委任の終了」に関わるトラブルは非常に多い、という背景があって平成3年の地方自治法の改正があり、それに伴い自治会の法人化(認可地縁団体への移行)によって、自治会名義で土地の登記ができるようになったので、トラブルの回避のために急いで認可地縁団体に変わらなければならない、と主張する方が現れました。

調べてみると、その方の地方自治法の改正の背景についての主張を裏付ける記述等は見つかりませんでしたし、その方の主張を聞いているうちに、どうやら土地の売買等の委任に関するトラブルの発生を心配しているのでは、と思えてきました。

なお、私のところの自治会は、その地方自治法の改正の頃や、その後何回か認可地縁団体への移行を検討し、その都度賛成少数で否決されてきています。

認可地縁団体ではなくても土地を所有している自治会や町会は多く存在していると思いますし、その多くは、土地の登記名義人の引継ぎの原因を「委任の終了」としているとのことですが、トラブルの多い登記方法との記述はネット上でも見当たりません。

私自身の法的知識が乏しいため、「委任の終了」には問題が多い、と主張する方にうまく説明できないので、この方面のことにお詳しい方々にアドバイスをお願いしたく思っています。宜しくお願いいたします。

A 回答 (1件)

法人格なき社団名義の登記なんて,登記の業界にいても数年(十数年?)に一度程度しか目にしません。

絶対数が少ないんですから,その中にあるトラブルもまた少ないはずで,それをネットで見つけるのは至難の業だと思います。

まあ,トラブルのもとになるようなものは,法人格なき社団が不動産を取得した後,代表者交代がない時期にその代表者が死亡してしまった事例が考えられると思います(「委任の終了」を原因とした登記があれば,その実体は地縁団体名義だと容易に想像できるので,ある程度のトラブルは防げると思う)。

ご存じのとおり,法人格なき社団が不動産を取得したとしても,その社団名義で登記することは許されていません(S23.6.21民甲1897通達)。代表者名義で登記する(社団構成員全員の委任に基づくと解する)か,社団構成員全員の名義で登記をしなければならなくなる(S28.12.24民甲2523通達)ところ,法人格なき社団の財産は構成員全員の「総有」と解されているため,全員名義では不都合が生じます(全員名義だと「共有」になるところ,共有では各人について共有持分の登記が必要になってしまう)。代表者名義で登記するにしても,肩書として社団名を冠することができない(S36.7.21民三625通達)ため,代表者名義で登記しただけでは,代表者が個人的に不動産を取得したのと同様の外形を表することになります。

この状態で名義人となっている代表者が死亡すると,実体上(法律上)は民法653条により代表権が消滅し,次の代表者名義に登記をしなければなりません。ところが名義人が死亡しているために,登記にはその代表者の相続人全員の協力が不可欠(登記義務は不可分債務として相続人全員に承継されるから)で,1人でも行方不明者がいたり,また相続人がおらず相続財産清算人の選任が必要な場合には,財産引継ぎには相当な困難が伴います。
また外形では名義人死亡により相続が発生しているように見え,実体は社団名義であることを知らない人が,誤って相続の登記をしてしまうおそれもあります。

「委任の終了」を原因として名義変更をしていない不動産については,そのようなリスクがあると言え,それがトラブルのもとになると考える人もいることは,このあたりの知識がある人だと当然に思いつくことだと思います(それをネットに上げるかどうかはまた別の話)。

誤って相続登記をすることについては,固定資産税の納税義務者が社団になっていれば防げるのではないかと思います(登録免許税の計算に固定資産税評価額を使用するので,それを調べる過程でわかったりするから)が,課税名義が個人宛だと,それを防ぐ手段は公的にはありません(委任の終了の登記がある場合を除く)。

相続人の協力問題については,同居の親族でもいればなんとかなりそうですが,そうでなければ個人情報の保護を盾にされて相続人を調べることが困難になるため,時間も手間もコストもかかることになります。行方不明者がいて,不在者財産管理人を選任する必要が生じたような場合では,そのための時間と手間とコストも加算されることになります。そしてこれは,委任の終了の登記があっても防ぐことはできません。

そのような登記の面から考えると,認可地縁団体になれるものであればなって,地縁団体名義にしたほうが,潜在的リスクを抱えるリスクも減るということになります。

逆に言うと,認可地縁団体反対派の主張を認めてもらうとするならば,このリスクを防ぐ手段があることを証明していけばいいのかなと思います。
…と思うのですが,それが思いつかないんですよね。だから福島市も,認可地縁団体の説明文中に「トラブル」という言葉を使っているのかなとも思えます。

認可地縁団体とは @福島市
 https://www.city.fukushima.fukushima.jp/chiki-ky …

ただ認可地縁団体になるには,そうと認められるだけの要件を満たしているかどうかが問題になります。そちらを満たしていないのであれば,地縁団体であっても認可地縁団体にはなれないので,そっち方向で議論をしてもいいのかもしれません。
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この回答へのお礼

詳しくご回答いただき、ありがとうございました。
ネットでは、土地の取引などでの委任についての民法上のトラブルは多く見受けられますが、不動産登記法での委任の終了のトラブルは、自治会・町会の絶対数からすれば少ないのは当然なんですね。納得しました。

不動産の登記は自治会・町会名で行うことができれば、委任の終了の場合で考えられるトラブルはなくなる、という点は、疑う余地はない、と思っています。
しかし、認可地縁団体の数の割合は、全自治会・町会の数の10%台であろうと思います。令和3年度からは不動産を持たない自治会・町会でも認可地縁団体への申請が可能になったのに、その後に申請が増えてはいないようです。

認可地縁団体は法人格を持った社団ということで納税義務が発生する(毎年確定申告が必要になる)ということや、免税や減税の手続きをするといった事務手続きが法人税関係では毎年必要のようですし、固定資産税の減免措置は、それなりの理由が必要等、何らかの事務的処理が増えるようですね。
あと、認可を受けるのに労力を要するけれども、解散をするにはもっと労力を要する、ということもあるようですし、認可地縁団体への申請に至るまでには、十分に話し合いが必要と思っています。

お礼日時:2025/02/02 16:43

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