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 特許を調べていて下記のような疑問が生じました。このケースに関し、解釈の仕方をご教示いただければ幸いです。

 発明人が同一の物質特許が2種類存在したとします。両者の関係は。広めの請求範囲を有する特許A(単項式、マーカシュ形式で記載)と、特許Aを少し縮めた請求項を持つ特許B(単項式、マーカシュ形式で記載)です。請求項以外の部分については、両者で全く違いがありません。後者は、前者の出願のわずか2ヶ月後に出願されています。前者は。請求項の広さのわりに実施例が少ないという理由から拒絶理由通知を受け、結局後者と同じ範囲まで請求項を縮めています。しかしこの両特許はいずれも特許登録されました。

 発明人が異なる場合、当然後願は排除されると思いますが。このケースでは出願人が同じであるため、先後願の関係にはならないと思われます。しかし、だからといって全く内容が同じ特許が成立するものなのでしょうか。

 ちなみに、これらの特許は。昭和54年の出願です。

A 回答 (2件)

1つ1つ解説していきますね。



>発明人が同一の物質特許が2種類存在したとします。
>両者の関係は。
>広めの請求範囲を有する特許A(単項式、マーカシュ形式で記載)と、
>特許Aを少し縮めた請求項を持つ特許B(単項式、マーカシュ形式で記載)

これはあり得ないパターンではありません。物質特許については、先に出願されている発明の中で特に顕著な効果又は別の新たな効果があるものが見つかった場合、『選択発明』として認められ、他人でも出願できますし、特許になる場合があります。(この話は、物質発明に係る出願を取り扱ったことのない方には意外だと思われるようですが、事実なんです。)

但し、後願の特許請求の範囲が先願の特許請求の範囲と全く同じ場合には、当然ですけど『選択発明』になりません。

また、後から出願した選択発明の特定的な物質が先願の明細書にすでに具体的に(実施例等に)記載されていた場合には、たとえ上記の効果が先願に書かれていなくても、「単なる効果の発見」と見なされて、選択発明は認められません。先願の明細書にその選択発明の物質が具体的に記載されていないことが要件です。

先願の範囲内であって後願の範囲外のものも同様の効果を示すというような場合にも、同じことですね。そういう疑いがある時には拒絶理由通知が来ます。そういう疑いを持たれないためには、明細書にちゃんと比較実験のデータを載せておくことですが、拒絶理由通知が来てから比較実験データを提出するも可能です。(今はたしか、比較実験の実験成績書をわざわざ“画像ファイル”にして、意見書に貼付けて添付する、という大変めんどくさい形を採る必要があったと思いますが。)

なお、選択発明の場合、先願が他人の特許だと先願特許権者の許可を得ないで後願の発明の実施をすることはできなくなるのでご注意を。

>請求項以外の部分については、両者で全く違いがありません。

それは問題になりません。ただ、出願人が異なる場合にはモラル的にまずいと思いますが。(たしかそのようなことが話題になったご質問があったような記憶があります。)

例えば、昭和62年以前は出願の単一性(当時は『1発明1出願』と言いました)の点で厳しかったので、現在では1つの出願に含ませることができたものでも、別々に出願しなければいけないということはよくありました。

以前私がoilpapaさんにお教えした「法規便覧」のページでS60年の38条とS62年の37条とを比較して下さい。
http://www.ipdl.jpo.go.jp/PDF/Sonota/hobin/index …

さらに、国によっては出願の単一性の要件が異なるため、日本の法律を知らない外国の出願人による出願の場合には、日本では1つの出願で済むものをわざわざ別出願にするということはいまだにある話です。(翻訳する段階で時間的な制約のために複数の担当者が担当してそのことに気がつかなかったというようなことは、十分に起こり得ることです。)

>後者は、前者の出願のわずか2ヶ月後に出願されています。

ということは先後願の関係ですね。

>発明人が異なる場合、当然後願は排除されると思いますが。このケースでは出願人が同じであるため、先後願の関係にはならないと思われます。しかし、だからといって全く内容が同じ特許が成立するものなのでしょうか。

特許法第29条の2で言う先後願にはなりませんけど、その場合には特許法第39条第1項が適用されます。むしろ特許法第29条の2は後からできた条文なんですよ。

>前者は。請求項の広さのわりに実施例が少ないという理由から拒絶理由通知を受け、結局後者と同じ範囲まで請求項を縮めています。しかしこの両特許はいずれも特許登録されました。

29条の2と39条1項のもう1つの違いは、29条の2の場合には先願の特許請求の範囲以外の部分に記載されている場合にもアウトなんですけど、39条1項の場合には先願の発明の詳細な説明に書かれていても、特許請求の範囲が区別されていれば特許されます。でも、上に書いた選択発明の要件を満たさずに特許請求の範囲が重複していると、特許されませんよ。どこかしら違っているということはありませんか? もしよろしかったら、特許番号を教えて頂けるといいのですが。

>ちなみに、これらの特許は。昭和54年の出願です。

かなり古いものですね。私もまだその当時は特許関係の仕事に就いていませんでした。(というか、就職もしていません。)

その頃はまだ追加特許(第31条)というものがあった時代ですが、追加特許は『独立の特許に【代え】、追加の特許を受けることができる』となっていますので、両方特許になるということはないと思いますよ(そういうものを見た経験はないので自信なしですが)。なお、追加特許に代えて現在の国内優先権主張(第41条)制度が始まったようですね。

私の回答としては、『もう一度特許請求の範囲を厳密に比較して頂けませんでしょうか』ということになりますが、それでも全く同じということであれば、間違って特許されてしまったということも考えられます。所詮人間が審査をするわけですから、そういうことも無きにしもあらずなんです。

いずれにしても、もう特許権存続期間は満了していますから、今さらという感も否めませんが。あっ、無効審判は特許権の消滅後でも請求することはできるはずですよ(特許法第123条第2項)(当時の条文でも同じです)。

参考URL:http://www.ipdl.jpo.go.jp/PDF/Sonota/hobin/index …

この回答への補足

非常に丁寧に解説いただき、感謝感激です。本当にありがとうございます。

アドバイスをいただいた通り、特許明細書を比較したところ、非常に基礎的なミスに気がつきました。特許公開公報のみで、請求の範囲を比較していたのです。どうもすみません。

補正後の特許を比較しますと、特許A(広めの方)は拒絶理由をつきつけられて、結局最も重要だと思われる化合物(わずか1個)までクレームを縮めています。一方特許Bは、はじめに少し縮めていたのが幸いしたのか、ある程度の広さでクレームが残っているようです。ただし、上記化合物についてはピンポイント除いてありました(「除くクレーム」です)。したがって、互いの明細書のクレーム部分は同一ではありません(むしろ、全く重なっていません)。

あと、教えていただいた部分で少し疑問なのですが。選択発明において、クレーム以外の部分が同じでも問題ないとのことですが。そうした場合、進歩性の面で全く両者に差がなくなると思うのですが。

いろいろきいてしまって申し訳ありません。お手すきの時にでも教えて下さい。

補足日時:2002/11/25 12:56
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>選択発明において、クレーム以外の部分が同じでも問題ないとのことですが。

そうした場合、進歩性の面で全く両者に差がなくなると思うのですが。

あっ、ごめんなさい。誤解を招いてしまったようですね。(汗)
「クレーム以外の部分が同じでも問題ない」というのは、ご質問のケースについて申し上げました。ご質問のケースでは、先願が公開される前に後願を出願していますから、進歩性を考える必要は全くありません。発明者が同一ですし、クレームさえ区別されていればOKです。

実施例も同じだと、先願発明の実施例が後願明細書にも書かれていることになりますが、先願発明を特定の化合物に限定し、後願ではその部分がピンポイントで除外されているのでしたら、問題ありません。

他方、先願が公開された後に出願する場合には、29条の2や39条の先後願の関係ではなくなりますので、進歩性があることが不可欠です。この場合には、#2でも申し上げましたように、「特に顕著な効果又は別の新たな効果がある」ことが要件です。

クレーム以外の部分が全く同じでは、実施例も同じということになりますから、進歩性の証明はできていませんね。oilpapaさんが疑問に思われたのはこの点ですよね? 誤解させてしまって申し訳ありませんでした。
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この回答へのお礼

再度詳しい解説をしていただき、ありがとうございます。
時々本で見て勉強するのですが、理解しては忘れの繰り返しで・・・。
確か、「拡大された洗願の地位」云々とかいうのですよね。
確かにこの場合は、出願人が同一ですので、後の出願が拒絶されることはないんですよね。
もう一度、先後願の関係について勉強したいと思います。
お世話になりました。

お礼日時:2002/11/26 12:34

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