No.2
- 回答日時:
良い質問ですね。
私は法律の素人で、今囲障設置権で本人訴訟起こし、もめている最中です。問題となる法律条文は
(囲障の設置)民法第225条 二棟の建物がその所有者を異にし、かつ、その間に空地があるときは、各所有者は、他の所有者と共同の費用で、その境界に囲障を設けることができる。
です。私の場合、被告の土地は更地です。ですから建物は1棟しかありません。被告の前の所有者と私の父が合意して30年前に築造したブロック塀が老朽化したため、耐震性能上問題のない新たな塀の築造を提案したところ新しい地主が拒否したという事件です。
裁判官いわく「本件、2棟の建物はないですね。一方の土地は更地ですからね。本条文は、塀が無いとき時に、新しく塀をつくることは請求できることは明らかでしょうが、既にある塀を作り直すことは請求できると書いてありませんよね。」と言って、私の主張に反論してきました。(仮処分申請でしたので、審尋扱いですから普通の法廷とは異なる会話もOKです)
私の反論はこうです「法律に書いていないから、出来ない、法律に出来ないと書いていないからやって良いと、いつからなったのですか?」
つまり文字解釈は許されるか、文理解釈は合法かという問題提起です。
誰がどう考えても文字解釈は禁止です。
私は、国会図書館に出かけ、インターネットでも調べて「一方の土地が空き地であり、1棟しか建物の無い場合でも、本民法第225条を類推適用できる」という判決文をコピーして提出したら、裁判官二度とこの話をしなくなりました。
No.3ベストアンサー
- 回答日時:
ご質問については、こちらのサイトが端的に説明していると思います。
http://www6.plala.or.jp/m-maa/laws/lawsbox/144.txt
要するに、「文字解釈」と「文理解釈」を分ける見解は、言ってみれば学者の議論のための分類で、さほど重視する必要はないと思われます。
それより重要なのは、法解釈に当たっての、文字解釈も含めた広い意味での「文理解釈」と、「論理解釈」(目的論的解釈などともいわれます)の兼ね合い、これに尽きるのではないでしょうか。
質問者さんは、おそらく法学入門といったような本を読むなどして、1から手順を踏んで法学の勉強を進めておられるところだと思います。ですから、あえて言うまでもないかもしれませんが、#2の方が、「文字解釈は許されるか、文理解釈は合法かという問題提起です。誰がどう考えても文字解釈は禁止です。」などといわれるのは、極めて一面的な認識だと思われるところです。
法文を離れ、これをないがしろにした法解釈はすべきでない。しかし、法文にとらわれるあまり、法の趣旨・目的をないがしろにした法解釈もまたすべきではない。成文法規がある場合、まずは文理解釈から入るものの、これによっては公正妥当な解釈が得られない場合には、多少文理から離れても、法の趣旨・目的に則った解釈がなされねばならない。これが、法解釈の要諦でしょう(ただし、刑法では「罪刑法定主義」の要請から、類推解釈が禁止されるなど、文理解釈の要請がより強くなります)。
手近にある、#2の方が挙げられた裁判例を例にとってみましょう。実は、これは判決ではなく、神戸簡裁の決定(昭和52年1月14日判例時報860号147頁)と思われますが、この決定は、民法225条の文理解釈を貫徹すれば、「二棟の建物」はないため囲障の設置は認められない。しかし、これは相隣者の一方が「居宅を後から建てようとして塀を設けている」という事案で、事後的には「二棟の建物」になるものであったため、民法225条を「類推適用することも不可能でなく、少くともその趣旨を尊重すべき」としたもので、論理解釈を加味しています。
しかし、これがもし相隣地の一方には建物があるものの、もう一方が建物築造の予定が全くない更地の場合ではどうなるか。これを示した裁判例はないと思いますので、頭の体操としてためしに考えて見ましょう。
まず、文理解釈からすると「二棟の建物」にはあてはまりません。
そこで、法の趣旨・目的を考えます。ざっくりとした法の趣旨・目的は当然、相隣関係の調整にありますが、それだけでは漠然としているので、もっと突っ込んで考えてみると…。
更地は、外部からプライバシー等を保護すべき要請が類型的に低いが、建物は、人の居住その他に用いられ、これを保護すべき要請が高い。そして、塀を立てるのは、外部からのプライバシー等の侵害を防ぐためである(境界を明らかにするなら223条の境界票で足りる)。しからば、塀を建てる必要性は、建物のある土地にのみ存し、更地の所有者にまで「共同の費用」の負担を求めるのは公平を欠き妥当ではない。すなわち、民法225条が「二棟の建物」としている趣旨は、プライバシー等を保護すべき要請及び費用負担の公平にあると考えられる。そうすると、一方が建物築造の予定が全くない更地である場合にまで、民法225条を適用ないし類推適用すべきでない。
と、形式的理由からも(文理解釈)、実質的理由からも(論理解釈)、民法225条の適用を否定する解釈をとってみました。#2さんの相手方であれば、このような陳述をして争うことになるでしょう。
法解釈に唯一絶対の正解はありませんので、上記以外の解釈もありうるところですが、法律を学んでいくと、事を文理解釈という形式判断と、論理解釈という実質判断の両面から考える判例を大変よく目にすることになると思います。
もし、法解釈を身近に感じていただけたなら幸いです。
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