No.2ベストアンサー
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本来であれば相続の登記はすべきですが,現実に建物を取り壊してしまった場合には,相続の登記をする実益がなくなります。
相続登記をせずに建物を取り壊し,被相続人名義のままで滅失登記をすることはままあります。相続は,被相続人の死亡と同時に開始されますので,被相続人名義の建物は,相続の登記の有無にかかわらず,相続人の所有物(法定相続人が複数いる場合には,その全員の共有状態になります。そのため,遺産分割前に一部の相続人の思惑により勝手に取り壊してしまったりすると,それが他の相続人の権利侵害となり,損害賠償責任を負うこともありえます。もしも建物を取り壊す場合には,遺産分割が終わってからにすべきです)になります。所有権の登記は「権利の登記」と呼ばれ,権利の登記は第三者対抗要件を備えるために行う(一部例外あり)ものであり(民法177条),相続の登記もこの「権利の登記」の一つです。権利の登記には登記義務がないので,相続が開始され所有者が変わっている場合であっても,登記をしないでいる人がけっこうな人数が存在するのが実態です。
この「権利の登記」は,権利があることが前提の登記です。権利の客体が建物(の所有権)である場合,建物の存在が前提になりますが,その建物を取り壊してしまった場合には,登記をする権利が実在しないことになります。ただ建物の登記だけが残っているので,不動産登記法57条により所有権の登記名義人に滅失の登記義務が課せられています。この57条の規定では,滅失登記申請義務のある者は「表題部所有者又は所有権の登記名義人」とされ,「その相続人」とは規定されていないことから,条文上は,相続の登記をすることが前提となっている規定だと読み取れますが,実在しない権利について相続の登記をする実益がありません。ですが登記名義人の相続人はこの義務を承継しているので,少なくとも建物の滅失登記申請はしなければならないことになります。
ということで,建物を取り壊してしまった場合には,相続登記をせずに(でも相続証明書は添付して),被相続人名義のままで直接建物の滅失登記申請をすることが可能だとされています。
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