
No.3ベストアンサー
- 回答日時:
例えば、水素原子二つから水素分子ができる場合、それぞれの電子軌道を
下図のように描いたと思います;
E
↑ ─σ* ←軌道の重なりで生じた反結合性軌道
| / \
|1s─ ─1s ←軌道が重なる前のエネルギー準位
| \ /
| ─σ ←軌道の重なりで生じた結合性軌道
|
| Ha Hb
(Ha、Hbはそれぞれ水素原子)
π電子共役系でもこれと同様に考えると、感覚的に理解できるかもしれません。
まず、その共役系の4つの原子の、π結合にあずかる4つのp軌道について、
それぞれ2個同士で軌道の重なりを考えます;
E
↑ ─ πab* ─ πcd*
| / \ / \
| / \ / \
┼ 2p─ ─2p 2p─ ─2p
| \ / \ /
| \ / \ /
| ─ πab ─ πcd
Ca Cb Cc Cd
(Ca~Cdはそれぞれ炭素原子、πab・πab*はそれぞれCa・Cbのp軌道の
重なりで生じた結合性軌道・反結合性軌道。πcd・πcd*も同様)
次に、このπab・πab*とπcd・πcd*との間の軌道の重なりを考えます。
このとき、先程のp軌道同士の場合に比べると、軌道の重なりは小さいため、
エネルギー準位の分裂幅も小さくなります(因みに、重なり0→分裂幅0);
_π4
E / \
↑ πab* ─ ─ πcd*
| \ /
|  ̄π3
┼
| _π2
| / \
| πab ─ ─ πcd
| \ /
 ̄π1
Ca Cb Cc Cd
(元のp軌道は省略、そのエネルギー準位は左端の『┼』で表示)
この結果、Ca~Cdの炭素上にπ1~π4の4つの軌道ができます。
元のp軌道よりエネルギー準位の低いπ1・π2が結合性軌道(π2がHOMO)、
高いπ3・π4が反結合性軌道(π3がLUMO)になります。
(軌道が重なると、「重なる前より安定な軌道」と「重なる前より不安定な軌道」が
生じますが、このように、必ずしもそれが「結合性軌道と反結合性軌道となる」
とは限りません;その前に大きな安定化を受けていれば、多少不安定化しても
結合性軌道のまま、と)
このように考えれば、それぞれのHOMOとLUMOのエネルギー差は、CaとCbの2つの
π電子系で生じた時に比べ、Ca~Cdの4つのπ電子系の方が小さくなることが
理解していただけるのではないかと思います。
<余談>
このようにして共役系が延長していくと、軌道の重なりによる安定化幅はさらに小さく
なっていくため、「軌道」というよりは「電子帯(バンド)」というべきものになります。
また、HOMO-LUMO間のエネルギー差も縮小し、常温で励起が起こるようになります。
これによって、芳香族ポリマーや黒鉛などは電導性が生じているわけです。

No.2
- 回答日時:
補足します。
大事なことは「結合性π分子軌道が増える」ということです。そうしないとすべてのπ電子を収容することができないからです。
その際に、節面を持たないπ分子軌道も生じます。節面を持たないということは、共役系全体にわたってπ電子が非局在化することになりますので、その軌道は安定です。
しかし、そういった軌道は通常1個のみであり、それ以外の軌道は節面を有しています。
一般論として節面の多い軌道は不安定であり、長い共役形を有する分子の、数ある結合性π分子軌道の中には、比較的節面の数が多く、不安定なものも含まれているということです。
HOMOというのはもっともエネルギー順位の高い結合性軌道といえますので、安定な軌道とは無関係であり、上述の節面の多い、不安定な軌道に関する議論になります。
要するに、共役系が長くなると種々のエネルギー準位の結合性π分子軌道が生じるが、その中には比較的不安定なもの生じる。結果的に、共役系が短い場合に比べて不安定な軌道がHOMOになるということです。
LUMOについても逆の議論が成り立ち、比較的安定な軌道がLUMOになるということです。
なお、分子としても不安定化しますが、それはHOMOとLUMOの関係で反応性が高くなることによります。安定なπ分子軌道も存在しますが、通常、それらは反応に関与しません。

No.1
- 回答日時:
共役系が長くなるということはπ電子系が長くなるということです。
そうなるとπ電子の数も増え、結合性π分子軌道の数も多くなります。
一般に結合性π分子軌道は、軌道の位相が逆になる面(節面)が多くなるほど不安定になります。
π電子系が長いほど、節面の数や位置のバリエーションが増大しますので、そのなかに比較的不安定な結合性π分子軌道が生じてくることになります。
すなわち、共役系が長くなることによって、比較的節面が多く、不安定な結合性π分子軌道が生じることになり、結果的にHOMOのエネルギー準位が上昇することになります。
似たような理由でLUMOのエネルギー準位も低下し、HOMO-LUMO間のエネルギー差が小さくなります。
この回答への補足
回答ありがとうございます。
…ということは、π電子系が長くなるとより反結合性軌道に近い(エネルギー準位の高い)軌道による結合が増えることになり、つまり分子としては不安定化する傾向にあるのでしょうか?
感覚では共役系が伸びると安定化するような気がするのですが…。
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