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ベンゾイン Ph-CH(OH)ーCO-Ph
をメタノール溶媒下、水素化ホウ素ナトリウムによりヒドリド還元して
ヒドロベンゾイン Ph-CH(OH)ーCH(OH)-Ph
を作る実験をやったのですが、メソ体(1R,2S体または1S,2R体)が優先的にできる理由とは何でしょうか。

うちの先生に聞いたところでは
(1)クラム則は古くて使えない。 というかアルキル基のように単純ではないので当てはまらない。
(2)一般的な有機化学の本に、水素化ホウ素Naのヒドリド還元の機構として載っていた、
 「H-イオンがカルボニルCを攻撃すると同時に、溶媒分子が触媒的に働いて
 『カルボニルC,Oとヒドリドイオン由来のH原子、
 メタノールのCH3-O-H』
 が6員環の遷移状態を作り、メトキシ水素化ホウ素がとれて、できる」
 というのはフェルキンーアーンモデルという考えらしいのですが、今回のベンゾインのケースには当てはまらない。
(3)ベンゾインのOH基の側からH-イオンが寄ってきて何やら安定な構造を作り、だから選択的に進むのだ。

ということでしたが、(3)について説明が咀嚼できなくて理解できませんでした。

上記の考えは違うよ、というのでも補足する意見でも結構ですので、ご回答よろしくお願いします。

A 回答 (4件)

Bは第2周期の元素ですので、配位数は最大で4になります。


したがって、BH3の状態で、OHの酸素が配位するということは可能です。しかし、その状態でさらにカルボニル酸素が配位することはありません。つまり、OHの酸素が配位することによって、すでに4配位になっているので、それ以上の配位は不可能ということです。
したがって、環状の中間体を考え、キレーションモデルで説明しようとすれば、OHの酸素がBに配位すると考えるのには無理があります。
しかし、このような状態になったとしても、その次の段階として、OHのHとBH3のHがH2としてとれて、O-B<となればカルボニル酸素の配位が可能になります。

なお、環状の中間体を考えるキレーションモデル以外での説明が可能なようであれば、OHの酸素がBH3に配位した状態からの反応を考えることも可能だと思います。
実際問題として、特定の中間体や遷移状態を捕捉することは困難ですので、それまでの知見と整合性があり、結果を説明できるような機構であれば、それを否定することも難しいと思います。
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この回答へのお礼

キレーションを考えるとき、OHの水素はH2発生に使われているのですね。(何か勘違いしていました。)
これまで教えていただいた分を含めまとめると、
(1)キレーションモデル 
(Ph基同士の距離と環状中間体の状態については?)
(2)単にOH基がBH3に配位
(配位するなら分極しているC=Oに付くのでは?)

といった感じになると思いますが、自分のレベルでは考察できない感じなので、また先生に聞いてみようと思います。
いろいろと、どうもありがとうございました。

お礼日時:2006/07/16 13:01

補足です。

ヒドリド反応剤の当量関係に関してはよく分かりません。というのは、確かに「最大で」4当量ということにはなると思います。
つまり、>C=O が >CH-O-B< になれば4当量ということになります。しかし、実際にそこまで利用できることはほとんどないように思います。つまり、アルコールを溶媒に用いた場合にはアルコールとの反応もある程度起こります。だからこそ上記の式で >CH-O-B< (これはアルコールとNaBH4の、H2の発生を伴う反応で生じるものと同じです)が生じるのだと思います。

もちろん、アルコールとの反応は遅いからこそ溶媒に使われるわけですので、上記のことがどの程度の重要性を持つかについては反応系によると思います。
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この回答へのお礼

いつもありがとうございます。
当量の件は、一般的なアルデヒド、ケトンに対する反応において、最終的にBH4-が[B-(OCH3)4]になるまでH-イオンが4つ使えるよ、という理論的な話で、おっしゃる通り分解等を考慮しないものだと思います。

上記のことと
>R0H + H-B< → R-O-B< + H2

これを合わせてですが、OH基のHが外れず(H2発生を伴わずに)、OH基の不対電子に「H-イオンを離したBH3」が配位する、ということは考えられるのでしょうか。だからOH基のある側からヒドリド攻撃が活発である、とも考えたのですが。
これは、OHの水素が取れてしまうと、また付けなければならないな、という素人考えからですが。

お礼日時:2006/07/15 18:15

補足です。


>カルボニルと水酸基のOはかなり離れてネジれた状態でキレート形成することになるのでしょうか。
BH3のB-H結合のうちの1本は、Oと結合すると考えた方が良いでしょう。
R0H + H-B< → R-O-B< + H2
すなわち、-C-O-B・・・O=C-の構造になり、両端のCはつながっていますから、5員環の構造になり、これは平面に近くなるはずです。この構造において、Lに相当するフェニル基よりも、Sに相当する水素の方がはるかに小さいので、Sの側からのH-の攻撃が優先します。

結果的に2個のフェニル基はある程度接近しますが、その不安定化よりもキレーションによる安定化が勝るということです。

なお、基本的なクラム則の図ではHとLが接近しています。ご質問の系であれば、HとLはいずれもフェニル基ですので、フェニル基が接近することになります。しかしながら、この基本的なクラム則の図は正しくないと考えるのが一般的で、現在では、「図3 Cram則におけるFelkin-Anhモデル」が正しいと考えます。結果は基本的なクラム則の図の場合と同じ選択性になります。なお、図3においては、求核剤が斜め下から攻撃するのがミソで(少し難しいですが、立体電子効果によるものです)、これがSとMを識別する要因になっています。
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この回答へのお礼

再度のご回答、ありがとうございます。
繰り返し説明していただいて、キレートの構造が見えてきました。

>R0H + H-B< → R-O-B< + H2

これに関しまして、前記有機化学の本に「CO基、アルコール溶媒下、NaBH4による還元において『CO基1当量に対し、BH4-は4当量対応する』」と書かれていて、水素発生などにH-イオンが使われることなく進む、ということになるかと思いますが、これは一般化した記述で今回のには当てはまらない、ということでしょうか。

自分のレベルで聞けるようなことは大体終えた感じですが、数日締め切らずにおきますので、また気づいた点などありましたらよろしくお願いします。

お礼日時:2006/07/15 11:56

フェルキンーアーンモデルというのは、基本的にクラム則と同じ結果を導きます。

つまり、立体選択性の理由としてクラムが考えたモデルを、計算に基づいて修正したのがフェルキンーアーンモデルだったと思います。
それで説明できないということであれば、キレーションモデルを考えるのが妥当でしょう。
参考URLにおけるキレーションモデルで、Mtlの部分にLewis酸性を持つBがきて、Lがフェニル基、Sが水素と考えれ、Hのかわりにフェニル基を考えれば、矢印の方向からのH-の攻撃によってメソ体ができますよね?
これが(3)の説明でしょう。ポイントはホウ素のLewis酸性(あるいは空軌道)ということになるでしょう。

参考URL:http://www.chem-station.com/yukitopics/topics16. …
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この回答へのお礼

ご回答、どうもありがとうございます。
確かに、BがOH基と安定な構造を作る、と先生が言っていた気がします(記憶があいまいで申し訳ありません)。
ただ、クラム則の説明の際「Ph同士が近い位置に来ることはありえない」ともおっしゃていて、そのことと参考URLで示していただいたキレーションモデルを合わせると、カルボニルと水酸基のOはかなり離れてネジれた状態でキレート形成することになるのでしょうか。
また、BH3(?)が受け取って安定になるのは電子対1つ分だと理解していたのですが、カルボニルOとOH基のO両方と手を結ぶことができるのでしょうか。

浅学の身で見当外れの質問ばかり発しているようで、申し訳ありません。

お礼日時:2006/07/14 23:40

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